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職務発明規程、「作ったあと」の運用は大丈夫ですか?

新しい技術を発明した従業員に、会社が報奨金を支払う。特許法は、そのための「相当の利益」に関するルールを定めており、多くの企業では「職務発明規程」を整備して対応しています。しかし、規程を作って社内に導入すれば、それで終わりというわけではありません。
規程を作った後、それが実際にどのように運用されているか。規程を作った当時と、現在とで、社員の顔ぶれや会社の業務内容が変わっていないか。運用実態を見直してみると、当初は想定していなかった課題が見えてくることがあります。
規程は「作った時点」からずれていく
職務発明規程を導入する際には、多くの会社が説明会を開き、参加した社員から同意書を取得します。導入時にはそれで問題ありません。
問題は、その後に入社した社員です。
入社時の誓約書に職務発明に関する一文が入っていることは多いのですが、「職務発明規程の内容を理解し、これに同意した」ことを明確に示す文言まで含まれているかどうかは、確認が必要です。
もし規程への同意が書面上明確でないまま何年も経過していれば、将来、退職した元従業員から「規程の説明を受けていない」「規程に同意した覚えはない」と主張された場合、会社側の反証が難しくなるおそれがあります。
「規程はどこにありますか」と聞かれて、答えられるか
もう一つ、意外に見落とされがちなのが、規程の周知です。
規程は、社員がいつでも閲覧できる状態に置かれていることが望ましいとされています。就業規則については労働基準法上の周知義務がありますが、職務発明規程についても、同様の観点で運用体制を整えておくことが安心につながります。
社内イントラネットに規程を掲載しているか、掲載日や改定履歴の記録は残しているか、社員に「どこに置いてある」と案内しているか。こうした一つ一つの記録が、後日「規程を見られる状態になかった」との反論を防ぐ材料になります。
退職者への対応は、事前の設計がものをいう
さらに難しいのが、退職者への対応です。
特許法上、相当の利益を受ける権利は、職務発明が生まれた時点で従業員に帰属するものと理解されています。したがって、出願時に在職していた社員が、特許登録の時点で既に退職していた場合、その元従業員に対してどのように対応するかは、あらかじめ考えておくべき論点です。
すべての退職者を追跡し続けることは現実的でない一方、退職時に将来分を含めて何らかの精算をしておく方法もあります。ただし、この精算の妥当性については、判例上も実務上も確定した基準があるとはいえず、個別のケースごとの検討が必要です。まずは自社の規程がこの点にどう対応しているか、確認することから始めていただくのがよいかもしれません。
会社を守るのは、規程そのものよりも、
規程が適切に運用されてきた記録である。
規程整備は「事後対応」ではなく「事前設計」
職務発明をめぐる紛争は、多くの場合、退職後に発生します。在職中は言いにくかった不満や、退職を機に生じる利害の対立が、時間を置いて表面化するためです。
そのときに会社を守るのは、規程そのものよりも、規程が適切に運用されてきた記録です。
同意書、周知の証跡、支払の履歴。これらが揃っていれば、多くの争いは未然に防ぐことができます。
IPCREWでは、職務発明規程の作成にとどまらず、その運用実態の点検、職務発明に関連する範囲での規程・誓約書・就業規則の整合性の見直しまで、企業の実情に合わせてご相談を承っております。「うちの規程、そういえば何年も見直していないな」とお感じでしたら、一度お声がけください。
弁理士 長田大輔
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